2012年8月25日土曜日

ブノージュ村の夏休み:その5 美しい村。

サン・シール・ラポピー:
カオールの町からロット川に沿って少し東へ行った崖の中腹に、St. Cirq Lapopieの村があります。「フランスのもっとも美しい村々」にも選ばれていて、最近はちょっと観光地っぽくなってきているけど、ロット川を望む森の中のきれいな村。
切り立った崖の上に教会の塔がそびえる。

















中世の巡礼は、山道のはるか彼方にこの村が見えたら感動しただろうな。私たちはもちろんマユミさんの車でラクチンに行きましたが。
石畳の急な坂道に小さな家々が並ぶ様子は、まるでホビットの村。迷路のような細い路地を登ったり下ったり、他人の家の庭をちょっと失礼して覗いたり。
トンネルも家も道もすべて石造り。涼しい風が抜けて行きます。

















すごいオッサン猫がいた。カメラも無視。堂々たるもんです。

















この村には中世から木工職人が多く、木の細工物で栄えていたんだって。特にろくろで作るケン玉が有名だったのだけれど、もう職人も減り、今はたった1軒しか村には残っていない。その店も、前に来たときはケン玉をずらりと並べていたのに、今回はお土産用の小さいコマとかスプーン類が増えて、ケン玉はほんの1段だけ。「5代続いた伝統の仕事だよ」って店主はいばっていたけど、ちょっと心配です。
日本のケン玉とはちょっと違う。重くてきれいな細工です。
















「フランスのもっとも美しい村々」は、もちろんフランス全国に散らばっているけれど、中でもこのロット川とドルドーニュ川のあたりがいちばん多い。水と緑に恵まれた美しい土地なのです。(由)

2012年8月22日水曜日

ブノージュ村の夏休み:その4 ロマネスク教会めぐり。

ブノージュの周りの村には、小さなロマネスクの教会や礼拝堂が点在しています。スイヤックやモワサックのように立派な柱頭彫刻やタンパンがあるわけではないけれど、どれも質素で気持の和む建築。ミサのときだけ巡回の司祭さんが来て、ふだんは鍵の閉まっているところも多い。でも、たいていは村の役場とか近所のカフェとかが鍵を預かっていて、お願いすると開けてくれます。
ベスの村の教会。家々も教会も明るい茶色の石でできている。

















ドルドーニュ寄りのベスの村の教会は、この辺では珍しく、西正面入口が彫刻で飾られている。といっても、素朴で可愛らしいアダムやイヴや天使たちです。
入口脇の柱の柱頭。人も動物も丸っこくてカワイイ。

















ベスからさらに西に行ったモンフェラン・デュ・ペリゴールでは、墓地の端に小さなシャペルがあって、その中がフレスコ画で飾られていました。これも素朴で子どもの絵みたい。
村から1kmほど登った丘の上の墓地。

















牛? でも羽があるし。でもやっぱり牛。

















キリストも天使もETみたい・・・

















ブノージュの南にあるレ・ザルクの村にはザッキンのアトリエがあって、いまはそこがミュゼになっている。その村外れの小さなシャペルにも、素朴なフレスコ画がありました。
このシャペルの壁画はザッキンが発見したんだって。

















他に誰もいない静かな狭い礼拝堂の中に、こんなフシギな絵を見つけると、なんだかシーンとしてしまう。そして、どの村にもほとんど人けがなくて、ただ静かに陽が照っているのです。(由)

2012年8月19日日曜日

ブノージュ村の夏休み:その3

村のカフェのこと:
ブノージュは、ほんとはマルミニャックという村の端っこにある集落の名で、日本で言えば〈字ブノージュといったところ。マルミニャック村の中心は、ブノージュから5キロほど離れたところにあって、村役場と教会、小学校、それに墓地などがある
ミディ・ピレネー地方ロット県マルミニャック村。

















中心と言っても商店は皆無で、小さなカフェが1軒あるだけ。 マユミさん(とボク)のタバコを買うためにこのカフェに寄ってみました。
2年前まではレストランもやっていたけど。











奥のカウンター(作業台?)でタバコを出してくれる。























中に入ると農家の土間のような室内に大きなテーブル。コーヒーはエスプレッソじゃなく、昔風に鍋で入れてくれるらしい。この日は午前中で席は空っぽだったけれど、去年は夕方に寄ったら、ほぼ満席の村人から、珍しいモノが来たぞ、と注目されてしまった。
夕方はこうなる。共同体の交流と情報交換の場です。

















「ブノージュのケイコのところに来ています」と口上を述べたら、全員納得でニコニコしてくれました。
マルミニャック村の人口は375人です。

















時々クルマの音が通過するだけの村のメインストリート。ひとっこひとり、いや、2人ほどいたけどね。(宏)






2012年8月18日土曜日

クリス・キリップ展。

(由)が見て来て「よかったよ」というので、 Chris Killip というイギリスの写真家の展覧会を見に、ドキュメント写真の展示場 LE BAL へ行って来た。
LE BAL は、クリシー広場近くの路地にある。ダンフェールからクリシー広場まで68番のバスでパリ縦断。ヴァカンス中で車内も道路も空いてるので、これがラクチンなのです。
展覧会は、What Happened Great Britain 1970−1990 というタイトルだった。



















What Happened といっても、特別な事件や出来事を追ったものではなく、故郷マン島とイギリス東北地方の働く人々やふつうの人たちを撮ったものだけれど、久しぶりに〈いい写真を見た〉という充足感があった。
貧しい人たちの日常を切り取った画面は、静謐で品格がある。白から黒へのトーンもきれい。
タイトルにたいてい、写された人の名前が入っている。つまりそれだけ、キリップとの距離が近いということ。〈いい写真〉のモトはこのへんにあるんだろうな。

キリップみたいにきりっとしてない。反省。

















LE BAL の感じのいいカフェでひと休みして、クリシー大通りへ。ベンチに座るおじさんを見て、思わずキリップ、いやスナップしてみた。
でもやっぱりダメですねー。おじさんの名前も素性も知らないんだもの。(宏)


ブノージュ村の夏休み:その2 食べ物のこと。

村に滞在中の食生活はというと:
お隣のイヴとエメ夫妻が自分たちの畑を持っていて、「インゲンが収穫期だから採っていいよー」「畑にスベリヒユがはびこって困るから抜いて!」という具合に声がかかる。彼らはもう野良仕事から引退しているので、自分たちだけでは食べきれないらしいのです。
そら豆がバケツに2杯。塩茹でして夕飯のアペリティフに。

















もちろん、すぐ飛んでいきます。1時間も働くと、食べきれないくらいの野菜が採れる。グリーンピースなんか、サヤを剥きながら生でもかじっちゃう。甘くておいしいよ、生のグリーンピース。
これはスベリヒユ。お百姓さんにとっては憎らしい雑草です。

















パリだとエディアールなんかで100g単位で売られているスベリヒユも、採り放題。鍋に2杯もあるので、半分は和風のおひたしに。残り半分は翌日冷たいサラダにしました。ちょっとヌメリがあって歯触りがシャリッと気持いい。
隣のイヴおじさん。ケイコさんの孫のセイジくんと。

















そして日曜日には、7キロほど離れたカザルの町で活気のある朝市が開かれます。採れたてのイチゴ、カシス、トマト、みなパリの朝市がダサく見えるほど新鮮(パリだってじゅうぶん新鮮と思っていたんだけど)。 イチゴは夏がシーズンだということ、ここに来て初めて知った。
この色、この量、この安さ!

















そして、カザルの市で果物を売っているオバサンの畑にカシスを買いに行きました。ドルドーニュ側に10キロほど行った林の中です。
ジャムを作るので5キロも買った。生でもすごくおいしい。

















今年は翌日帰宅したのでジャム作りには参加できなかったけど、去年はお手伝いしたので分けてもらったジャムを、まだ大事に取ってあります。市販のジャムなんか食べられなくなるほどおいしい。ケイコさんちの地下室には、こんなジャムがずらっと並んでいるんだよ。(由)

ブノージュ村の夏休み:その1

お待たせしました! ずいぶん遅くなりましたが(宏)と(由)の夏休みレポートです。
はるか彼方にドルドーニュ渓谷の丘を望む。

















二人が行ったのは、ドルドーニュ川とロット川にはさまれたロット県の小さな村。友だちのケイコさんの田舎の家があるので、ここ4年ほど毎年押しかけています。村といっても6、7戸の家があるだけで、カフェもパン屋もない。いちばん近いスーパーが6キロほど先。車がなくては生活できません。
ケイコさんの家。正面が住居、左は納屋兼車庫。広いでしょう?

















で、私たちはいつもマユミさんの車に便乗してパリから到着。ここを起点に近くの町や青空市を訪ねてまわったり。でもいちばんの楽しみは、この緑の中の、のんびりゆったりした暮らし。
すぐ近くにはこんな森の散歩道も。


















牛もいるよー。

















天気がよければ、朝ごはんはテラスで。昼ごはんと夜ごはんも庭にテーブルを出したり、バーベキューをしたり。陽が沈んでゆくのを眺めながら、暗くなるまでお喋りしています。ケイコさんの孫の幼い人たちがいるのも楽しい。
これは去年の夏。ケイコさんの孫のウメちゃん,リラちゃんと。















お店がないので週1回、火曜日に エピスリ(食料品店)の巡回車がやってきます。クラクションが鳴ると、みんな飛び出してゆく。野菜、果物、ハムにチーズに牛乳、何でもあって、しかもなかなか美味しい。特に大きな田舎パンは最高。今回はついにパリまで買って帰ってしまった。
トラックのオジサンは切手収集家で、日本の切手に目がない。

















 まだまだ楽しい話はいろいろあるけど、長くなるので続きは次回に。乞うご期待! (由)

2012年8月16日木曜日

8月15日。

日本では第二次大戦終戦記念日、フランスだとAssomption(聖母被昇天祭)の8月15日は、(宏)の誕生日でもあります。フランスは休日だから、集まりやすくてとても便利。
今年の(由)のプレゼントは、コードレスで軽い電気芝刈り機でした。普通はたいてい着るものなのだけれど、先月のソルドにBHVで見つけたこの芝刈り機に惚れ込んで、買っておいた。
芝生の隅用の機具だけれど、デコボコ地面のウチの庭にはぴったり

















「ホントは軽い木の梯子のほうが欲しかったんだけどなー」とちょっとガッカリな反応 でしたが、セットして動かしてみたら、なかなか気に入った様子。
ちょっとした植え込みの剪定にも使えるみたい。

















でも、もう指は怪我しないよう気をつけてくださいねー。
誕生日のご馳走は、ガスパチョ、イチジク+生ハム、マユミさんのお土産のカイエット、そして恒例の羊の肩肉のローストでしたが、写真も撮らずに食べ続けてしまった......
(宏)に、「これからは、もう1年1年がめでたいことですね」と言ったら、「誕生日なんか、20歳過ぎたらちっともオメデタクないや」というバチ当たりな返事でしたよ。 あーあ。(由)

2012年8月13日月曜日

ピストゥ・ソース。

相変わらず25〜28℃くらいの心地よい日が続いています。5、6、7月の悪天候もやっと忘れられる感じ。でもさすがに8月。日が短くなり、暗くなるのがどんどん早くなってきて、ちょっと寂しい
出窓のプランターのバジリコも、穂が出そうな雰囲気になっています。
台所の出窓で元気に育っている。何にでも使えて便利です。

















で、とりあえず穂先を摘んで、オリーブ油と一緒にミキサーにかけ、ピストゥ・ソースを作りました。ホントはニンニクも入れるのだけれど、今回は省略。
日が翳っているので色が暗いけど、ほんとうはもっと緑色。

















たまたま朝市で、丸ごとの鮭が安かったのを1本買ってあったので、さっそくそれを使って、夕ごはんは「鮭の蒸しもの、ピストゥ・ソース」。色的には白身魚のほうが似合うんですけどね。 美味しかったよー。
鮭は1本が4.50ユーロだった。安ーい!

















ところで、写真を撮るために「トップシェフ」 の真似してソースを「ドレッサージュ」してみましたが、これはやはりバカらしいことだなー。食の退廃ですね。料理で遊んじゃいけません。

話はぜんぜん変わりますが、庭ではプラムの一種 quetscheが熟れてきています。もう数日で食べられそう。
虫食いが今年は特に多い。赤い1cmくらいの糸ミミズです。

















タルトにするとすごーく美味しいんだけどね。無農薬なので、虫がたくさん住んでいるんですよ。(由)

2012年8月4日土曜日

ティム・バートン展。

シネマテークで開催中の「ティム・バートン展」に、やっと行ってきました。
展覧会開始の直後に一度出かけて行ったのだけど、もう長蛇の列で、根性無しの(宏)と(由)は「何時間も並んで展覧会見るのはゴメン」とあっさり諦めてしまった。気楽にフラッと入れない展覧会やミュゼには、ふつう行かない私たち。でも8月の初めに終わってしまうので、今回はさすがに諦めてネットで入場券を予約。並ばずに見てきましたよ。
これは5月のときの行列。2時間半待ちだったので断念。

















若者たちに大評判のわりには、仕掛けの少ないあっさりした展示で、彼の絵がたくさん並んでいたのが嬉しい。昔の動画作品も楽しかったけれど、人が多いので、とにかくがんばって立ち止まっていないとゆっくり見られなくて、かなりくたびれました。 こういう展示こそ、のんびり好きなだけ見たいのにね。撮影禁止だったので、残念ながら写真はありません。(由)

2012年8月1日水曜日

自然の王国。

パリ地方の猛暑日も3日で終わり、また降ったり晴れたり&涼しい天気に戻りましたね。(由)は、このほうがラクでパリらしくて好きです。
しかし夏になると生き物の活躍もすごい。庭のある一軒家に住んでいると、 植物と虫たちのエネルギーに負けそうで。まずは朝起きると、蜘蛛の巣があちこちに張ってる。
物干し竿にも蜘蛛の巣が。可哀想だけど遠慮なく壊しちゃう。

















蜘蛛は蚊やハエを捕まえてくれるし、動きも愛嬌があるから嫌いじゃない。枕元で卵が孵って、蜘蛛の子が顔を這いまわる場合以外は共存OKです。
アリも、基本嫌いじゃなかった……のだけれど、最近イヤに家中を我がもの顔で動き回っているので、さすがに不愉快になって殺蟻剤を購入。拠点を探しにかかったら、オソロシイ光景に遭遇。固定電話のFaxのインクロール紙の下に、何百という白い胡麻粒みたいな卵が溜め込まれていたのだ! 最近は固定電話もFaxもほとんど使わないし、暖かくて初めからアリの巣みたいに入り組んでるし……これはいい場所だ、と思ったんでしょうね。気持は分かるけど、すぐに掃除機で取り除き、殺蟻剤を撒いて殺戮しました。ゴメン。 あまりに気持ワルイので写真はなし。
そしてわが家は蚊も多い。日本みたいに網戸というものは市販されていないので、蚊帳を吊るしかありません。ウチの蚊帳はなかなか可愛いよー。
使わないときは、巻いて天井に掛けておく。IKEAの製品。

















広げてベッドに掛けます。たしか10ユーロくらいだった。

















風通しもいいしなかなか快適なのですが、寝てるあいだに猫が出入りすると、蚊が入る可能性あり。 あと手足を布に近づけてしまうと、布の上から刺す強者もいる。枕元にキンカンは欠かせません。
そしてもうひとつ、枕元にいつも置いてあるのがハエ叩き。蚊もこれで叩く。
角度によって顔が浮かび上がる。酷使したので角が欠けてしまった。

















なんとフィリップ・スタルクデザインのハエ叩きです。(由)