2015年7月30日木曜日

ヴェジネのギマール、ヴィラ・ベルト。


パリ西郊、ヴェジネに残るギマール建築 “Villa Berthe” が、夏限定で見られるというので出かけました。1896年に完成したこの家は、エクトル・ギマール初期の名作カステル・ベランジェと同時期のアール・ヌーヴォーです。
 RER・A線の終点サンジェルマン・アン・レイのひとつ手前のヴェジネ・ルペック下車。駅のすぐ近く、うっそうと繁る木々の中に、大きな鉄柵の門扉があった。
1930年代までこの門は建物正面にあったという。
カステル・ベランジェの扉によく似ている。
この鉄扉の脇、72番地の通用門のブザーを押すと、すぐ行きますと若い女性がうれしそうに迎えてくれる。彼女は Agathe Bigand-Marion(アガト・ビガン・マリオン)さん。建築史とりわけギマールの研究者で、この家の持ち主がヴァカンスの間、ひとりで案内をしているそう。客はボクだけだったけど、ていねいに説明してくれました。
3層の家は、ネオ・ゴシックとアール・ヌーヴォーが併存している。
芝生の庭に面した南正面の屋根に、3つの小屋根が突き出ている。城の塔ような形の中央の塔には半円形のボウ・ウインドウ(出窓)が、アール・ヌーヴォーを主張しています。
三角屋根とボウ・ウインドウが特徴的です。
北側の全景。
玄関は東側。でも家の中には入れない。え? というと、住人が留守ということもあるけれど、それよりギマールはもともとこの家の内装をしていない。というのは、建主が古い家具や美術品のコレクターで、内部はその収集品と合うようにクラシックな内装を望んで、ステンドグラスも暖炉も全く伝統的なものだそう。
それでもギマールは、建物の構造や窓や階段の構造はもちろん、外周りのあらゆる部分に、細心の工夫を凝らしている。ギマールは場所ごとに変化のある森のような家を目指していたという。
中世建築のような玄関。
石とレンガ、タイル、鋳鉄などの異なる素材を組み合わせて、違和感なくまとめ上げる才能はさすがです。
玄関横の窓はタイルとレンガ、そして鉄の飾り。
南面ボウ・ウインドウ周りには石のレリーフ装飾。
台所の窓。下の格子部分は野菜などの食料貯蔵庫だった。
北側の庭への出入り口。
地下室の換気孔。
建物の下部は裾広がりになっている。
南面のテラス。この家は窓が多く明るい。
テラス周り。有機的な形の不思議な石。
鉄の柵は藤の古木の圧力に負けない強度がある。
ギマールは1985年にブリュッセルでオルタとタッセル邸などの作品に出会って強い影響を受けてカステル・ベランジェを完成させている。
 外周りだけだったけれど、ギマールの世界に間近に触れることができました。ありがとアガトさん。(宏)


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