2012年9月25日火曜日

ブノージュ村の夏休み;その7 バスティッド。

ブノージュから数十キロ西、ドルドーニュの南の丘にあるモンパジエ(Monpazier)は、バスティッド(Bastide)と呼ばれる中世の自治要塞都市です。都市と言っても住民は500人ほど。サンシール・ラ・ポピーと同じ「フランスのもっとも美しい村々」のひとつです。
おもにフランスの南西部で見られるバスティッドは、13世紀から14世紀にかけて、見晴らしのいい丘の上に建設された当時のニュータウンです。数本のまっすぐな主要道路とそれを結ぶ路地が、格子状の街区を構成し、周りを堅固な市壁で囲んでいる。街への出入りは数カ所のの市門だけ。村の中心には正方形の広場があって、たいていどこもきれいなアーチ型のアーケードを持つ建物で囲まれています。
モンパジエのコルニエール広場。

















モンパジエは、この地方にいくつもあるバスティッドの中でも、その形がほぼ完全に保たれている代表的な例として知られている。
モンパジエの格子状の街区は南北が400m、東西は220m。













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1284年に当時のアキテーヌ公だったイギリス王エドワード1世によって造られたモンパジエの街は、今も中世のころとほとんど変らない。丘の上に整然と並ぶ古い家並みは、畑と森の続く周りの風景とは対照的な、都市的空間を感じさせます。
住民の自治権が与えられていた。

















バスティッドは、軍事と流通の、そして農地開拓の拠点として、トゥールーズ伯、イギリス王、フランス王家が,それぞれ競うように建設したらしい。
モンパジエのモンです。

















市門の外のテラスからの眺めも、中世のころとそんなに変っていないのかも。
いちめんの緑とドルドーニュの支流Dropt川。
















ドルドーニュ沿いのドム(Domme)もバスティッドです。ここはブノージュからも近い。眼下にドルドーニュの流れを見下ろす北側は切り立った崖。水面にたくさんのカヌーがミズスマシのように見えます。向こうの深く黒ずんだ森は「ペリゴール・ノワール」と呼ばれている。
いちめんの緑とドルドーニュ川。















フランス王フィリップ3世が造ったドムは、崖のある北側以外は堅固な市壁で囲まれている。でも地形の関係で格子状の街区は部分的。ここもやはり「フランスで最も美しい村々」のひとつで、サルラにも近いから、夏には大勢の人が訪れるかなりな観光地です。
ドム。南のトゥール門。















3つ目は南のロット川を越えてさらに南へ。ローゼルト(Lauzerte)は、1241年、トゥールーズ伯が造った初期のバスティッドで、ここもやはり「美しい村」です。
ローゼルトのコルニエール広場。















モントーバンやアジャンにも近いローゼルトは、メロンやプラム、フォワグラなどの集積地。中世にはサンチャゴ・デ・コンポステラへ向かう巡礼も通る村だった。
市門。ドムやモンパジエに比べると静かな村です。















もうひとつ、モンパジエの西北、ベルジュラック寄りのベルモン・ド・ペリゴール(Bèlmont de Perigòrd) は、エドワード1世の臣下が1272年に築いたバスティッド。ここは2001年までボーモン(Beaumont)と名乗っていたけれど、元のオック語の表記を使うようになった。
ベルモンには1200人近い人が住んでいて、村というよりは町かな?、という規模。そのせいか「美しい村々」には入っていません。
ジャン・ムーラン広場のカフェにいるのも地元の人たち。

















フランスの中世の町は、城や教会を中心にした円形のプランに蜘蛛の巣のように入り組んだ街路を持つのがふつうだけれど、計画的に造られた直線的な街区のバスティッドはユニークな存在。それが今もほとんど変わらずに保たれているのです。(宏)

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